6人が本棚に入れています
本棚に追加
/201ページ
「大丈夫。君の大切な友達を傷付けたりしない」
蒼井空は私の目を見て、しっかりとした口調で話す。私はなぜか不思議とその言葉を信じようと思えてしまった。
「ちょっと・・・待って!あの状態のプニ太郎を刺激したら・・・!」
私達が話している間にも、プニ太郎はこちらに向かって歩みを進めている。それに対して、周囲の人間達は何を思ったのかプニ太郎に対して攻撃を始める。
「くそっ、ここまで愚かだとは・・・!」
炎や氷の塊といった様々な力が次々とプニ太郎に対して放たれていく。しかし、それらの攻撃は全く効いていないようでプニ太郎は前進を続ける。
「荒ぶる神よ、汝の持つ本当の力を現したまえ・・・」
その声は確かに直ぐ近くで聞こえた。私はその発言者を見つけるために、直ぐに周囲を何度も見渡したが、結局見付けることはできなかった。
「なっ、なにこの爆発!?やばい、橋が崩れる!」
謎の人物が小さく呟いた直後に突然大きな爆発音と共に目の前のプニ太郎が爆炎に包まれていく。
その凄まじい衝撃は、少し離れた場所にいた私達までを余裕で包み込み、爆発によって飛ばされた瓦礫が私達の立つ歩行者回廊を破壊していく。
「手を伸ばせ!夏帆っ!」
瓦礫と共に私の体も地面に落ちていく。最後に目に映ったのは必死に私に手を伸ばそうとする蒼井空の姿だった。緊急事態とはいえ、呼び捨てで呼ばれていることに可笑しさと照れ臭さを少し感じた。
(この高さから落ちたら、たぶん助からないだろうなあ・・・私の人生もたった16歳で終わりかあ・・・良い人生だったなんて言えないけど・・・なんでこんなことになったんだろう?)
地面に落ちる最中、私は今から自分に起きることを実感できずにただプニ太郎と出会った時のことを思い出していた。
最初のコメントを投稿しよう!