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里美は近くにあった折れて丁度良い長さになった鉄パイプを手に持つと、こちらにゆっくりと向かってくる。
(えっ・・・ちょっと待って!鉄パイプで撲殺とか洒落にならないんだけど!)
私は近くに放置されていた鉄パイプに目を移すと、直ぐに手に取れるよう体勢を整える。
「あんたさえいなければ、一輝君は私だけのもの・・・だからさ、今度はちゃんと死んでくんない?」
私の目の前で立ち止まった里美の表情は悪意に満ちていて、まるで悪魔や猛獣に睨まれているかのように悪寒が走り、体が震える。
「死ね夏帆っ!」
こちらに向けて勢い良く振り下ろされた鉄パイプを辛うじて避けると、直ぐ様に落ちていた鉄パイプへと手を伸ばす。
「私は里美と殺し合う気なんてない!ただ話し合いがしたいだけ!」
最初の一撃が外れたことを気にする素振りも見せず、里美はもう一度鉄パイプを振り下ろす。
「話し合い?何を話し合うって言うの?それで一輝君があなたから離れるっていうの!?」
私は鉄パイプの端と端を両手で掴み、どうにか里美の追撃を受け止める。
「私は一輝の想いも聞いていないし、きっとお互いに友達としか思っていないから。だから、里美の恋路を邪魔する気なんてない!」
里美は自分の攻撃が鉄パイプで防がれていることも気にせず、一心不乱に鉄パイプを何度も振り下ろす。
「あんたがいるだけで一輝は他の女には目も当てないのよ!一輝君や私の気持ちを考えたことある!?成績が良くて顔が良いからって調子乗んないでよ!」
何度も振り下ろされる鉄パイプを防ぐ度に両手に凄まじい衝撃が伝わる。痛い、怖い。でも今日は負けられない、だってプニ太郎と約束したから。ここで決着をつけて元の自分に戻るんだ!
「告白もされてないのに、その気持ちにどう答えろっていうの!?そうやって発情期の、中2臭い観点で推し量らないで!」
私は鉄パイプを受け止めた瞬間に強くそれを押し返すと、そのまま里美に向けて全身を使って勢い良く飛び出した。
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