第2章 殺戮者

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「痛った・・・夏帆よくもやってくれたわね」 里美に飛び付いた私は里美と共にそのまま地面へと倒れていった。 「私の話を聞いて里美!私が仮に一輝から好意を抱かれていたとしても、それに応えることはできない。だから私なんて気にしてないで、里美はあなたの魅力で一輝を振り向かせれば良いじゃない!」 里美に覆い被さる形で倒れた私は、必死に抵抗しようと殴りかかる里美の両手首を掴み地面に押し付ける。 「うっさい!あんたの話なんか聞きたくないのよ!」 私の細い腕では、彼女の抵抗を防ぐのがやっとで、今にも手を離してしまいそうになる。 「小さい頃から一緒に過ごしてきたじゃない!それなのに、なんでこんな・・・。里美はいつでも助けてくれて優しくて強かったじゃない!私なんて比較にならないくらい魅力的だったはずよ!なのに、今のあなたは一輝に想いを伝えることから逃げようとしているだけじゃないの!?」 私は彼女の目をしっかりと見据えて、必死に説得する。しかし、彼女の目を見るに、完全に理解を拒んでいることは明白だった。 「うっさい!うっさい!うっさい!屁理屈ばかり言ってんじゃないわよ、このっ!!」 里美は自分の膝で強く私の腹部を蹴り上げると、そのまま立ち上がり、鉄パイプをまた拾おうとしている。 「ぐっ・・・」 全身を伝うかのような痛みに、私は息が一瞬できなくなり、目からは涙が流れる。立ち上がることができずに地面に倒れたままで、こちらに向かってくる里美の姿を見ることしかできなかった。
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