第2章 殺戮者

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私はその命が終わるときを静かに待っていた。しかし、その時はいくら待てども訪れることは無かった。不思議に思い、微かに目を開けるとそこにはとても信じることのできない異様な光景が拡がっていた。 「なにあれ・・・」 崖から突如として体を表した"それ"は里美を3つの目で一睨みすると、何の前触れもなくその体を後方に大きく吹き飛ばした。 「ぐっ・・・なんなのよ、この化け物は・・・!」 吹き飛ばされた先で、里美を体を擦りながら目の前に聳え立つ巨神を仰ぎ見ている。 そう、私達の目の前に120mは有ろうかという巨大な人形をした生物が突如として現れた。 顔の下部からは蛸の様な触手を硬質化させた器官を数本垂らし、その3つの目には黄暖色の光が怪しく灯っている。 人の形をしたその表皮はフジツボのような物で覆われ、触手や配線を想像させる装飾が施されている。明らかに人間のものではない高度な文明の生命体であるのは間違いない。 「宇宙人・・・?それとも・・・神様?」 崖から半身だけを見せるその姿は、歪で禍々しい姿をしていたが、どこか神秘的な雰囲気も併せ持っていた。一目で人類が勝てる相手ではないことを如実に感じさせる威圧感は畏敬の念すら抱かせる。 「まずい・・・逃げないと・・・っつ!!」 異形の生命体が、私に視線を定め体をよじる。そして、ゆっくりと左手を伸ばすと私の目の前でピタリと止めた。私は今から何が起きるのか全く予想できなかったが、里美が攻撃を受けた事実から危険な状況にあることは理解できた。急いで体を動かそうとするが、それよりも早く異形の左手から眩い白色の光が放たれ私を包み込んだ。
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