第1章 海からの贈り物

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ー1年前 玄富村・亀島海水浴場 (誰も私を必要としていない・・・私も誰も必要ない・・・こんな意味のない世界・・・滅んでしまえばいいのに・・・) 夕暮れに染まり始めた夏の浜辺は、深い青と眩い朱色に照らされていてとても綺麗な光景だ。しかし、そんな景色に反して、私は酷く暗い気持ちでここ1年を過ごしている。 私の名前は、嶋田夏帆(しまだなつは)。玄富村中学校に通う16歳で、今年が中学校最後の年になる。 「それなのに、本当に冴えないね私の人生は・・・もういっそ、この綺麗な海と一緒になろうかな?」 防波堤ブロックの上に座り、目の前に打ち寄せる波を見る。波は多少水しぶきを上げているが、それでもとても穏やかだ。昔から海と共に過ごしてきた私は、これでは容易に溺れることはできないだろう。 「おい!ここに変な生き物がいるぞ!」 「あっ!本当だ、ブニブニしてて気持ち悪りい!」 「つつくと動くぞ!ほらお前らもやってみろよ!」 せっかく綺麗な景色と静かに流れる時間を感じていたというのに、直ぐ側の浜辺から大きな声が聞こえる。 (あいつら、なにやってんの?・・・まさか、いじめ?) 声のする方に目を向けると、3人の小学生位の男の子が、何かの周囲を取り囲んでいるようだった。 執拗に木の棒を振り回すその姿に、思い出したくもない嫌な思い出が蘇り、瞬間的に目の前が真っ暗になり、吐き気が催される。 (1人じゃ何もできないくせに・・・群れなきゃ何もできないくせに・・・なんでそうやっていつも誰かを迫害するのよ・・・!!) 気付いたときには、勢い良く防波堤から飛び降りて、少年達の元に走り出していた。
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