第2章 殺戮者

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そうして私が石像に触れたのと殆ど同じ時に突然頭上から一筋の光の矢のようなものが降り注いだ。 それは、目の前の石像の頭部に当たると、その全身を包み込んでいった。 「えっ?なに、なんなの!?触ったのがまずかったの!?」 一瞬私が石像に触れたのが原因なのかと思い、慌てたがよく考えれば恐らくここは誰かの記憶の中の世界で、現実ではない。恐らく私が触れた時と天から光の矢が降ってきた時が偶々重なっただけだろう。 光は石像の内側からも強く光り始め、薄緑色の光で視界が埋め尽くされている。やがて、その光が徐々に収まると、突如として石像の首から上の部分が柔軟に動き始め、周囲を確認するかのような仕草を見せた後でとても大きく咆哮した。 「・・・石像が・・・動いた」 私が目の前の光景に反応できず、立ち尽くしていると今度は上半身を捻るような、まるで体をほぐすかのような仕草を見せた。 翡翠のような質感をそのままに、到底動きそうもない体が目の前で可動していることに私は驚きを隠せなかった。 「えっ、ちょ危ない!!踏みつぶされる!・・・って、そうよね。やっぱりこれは現実じゃないのね」 そして、遂には脚部までもが動き出す。その足は私を気にすることなく歩き始め、踏み潰されそうになった私は慌てて飛び避ける。巨大な足は私から数センチもないところを踏み鳴らした。完全には避けきれず、スカートの端が少し踏み潰されたのだが、何ごとも無かったかのように巨大な足をすり抜けて傷一つ付かなかった。 やはり、ここは現実ではない。誰が何のために私にこんなものを見せているのかは分からないが、とりあえず命の危険はないようだ。
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