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「何をぼさっとしている。私が感謝の気持ちを伝えたのじゃ。もう少し喜んでもよかろう」
何事もないかのように平然と喋るスライムもどきに私は目を奪われていた。
(えっ・・・なに、最近のクラゲは喋るの・・・?それともこれは幻覚?精神病みすぎちゃったのかなあ・・・?)
目の前の状況に反応が完全に追い付かず、必死に冷静さを保とうとするが、全く効果を成していない。
「私が見えておらんのか少女よ。この愛らしくキュートでプリティーな姿が見えないとは実に勿体無い。しかし、我が見えないなら仕方がない、帰ることにしよう」
そう言うと目の前のクラゲもどきは私に背を向け、海の方へと触手のような短い複数の足を動かし始めた。
「ま、待って!あなたクラゲなの!?それともスライムだったりするの!?」
ようやく口から出た言葉はそんなどうでもいいような事だった。しかし、ゲーム好きな私にとってはスライムのようなファンタジーの生物が存在していることについ興奮してしまい、確かめずにはいられない。
「ほぉ・・・私が見えていたか。我が名はアビス!この海の王にして、支配者である!改めて先程の礼を言おう。ありがとう少女よ!」
クラゲもどきは私の言葉にピタリと足を止め、ゆっくりと振り返ると自信たっぷりに胸に当たる部分を張って大きな声で答えた。
「あびす・・・?ええっと、つまりスライムなのかな?クラゲなのかな?」
「なんと!私を2度もスライムやクラゲ等と一緒にするとは許せん!その身を持って、我が力を味わうが良い!!」
私の発言がクラゲもどきの感性を刺激したのか、その小さな体をぎゅっと縮めると、勢い良く私の方へ飛び込んできた。
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