翡翠の主

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 先輩のことは尊敬しているが、同時に恨めしくも思っていた。いつでもどこでも自分が一番で、他人のことを下にしか見られない。あの生意気な態度をもってして、かつ、撮影の技術はプロに匹敵するのだからたちが悪い。おまけに運も良い。主の写真もそうだが、日本には稀にしか飛来しない珍鳥、セグロカッコウにも出くわしていた。写真を見たときに感動したと同時に、例の如くの生意気な態度に奥歯を噛み締めたものだった。  こうなったら、先輩よりも素晴らしい写真を撮り、一度ぎゃふんと言わせる必要がある。それには先輩と同じ主の写真を撮りに行き、先輩のさらに上を行く、劇的な瞬間を写す他ない。僕がここに来たのは、そういうわけであった。
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