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「それで話というのは?」 私はやっと本題に入ったのである。彼女は憶えていたとは思わなかったという風だった。 「ああ。あれには特に決まった話はなかったんです。どんな話でもよかった。ただ確かめてみたかっただけで。自分の感覚が合ってたのか」 「合っていたのか?」 彼女は笑顔を作る。肯定と〝白々しい〟。 「もうそろそろ教室でお昼を食べようと思うんですけど、またここで話を聞いてもらってもいいですか?」 昼休みがもう半分も進んでいる。 「ああ。いつでも、とはいかないけど」 「次はあの曲についてですね。まだ先生の感想しか聞いていませんし」 そう。そもそも約束では彼女が話をするはずだった。 「わかった」 そして彼女は一礼して教室から出て行った。 私はこんなに会話になると思ってはいなかった。何よりも取り繕いのいらない会話をしたのが久しぶりだった。緊張はいつの間にかほどけ、一人になった今、静かではあるけれど高揚も感じられた。 私は彼女と話すのを楽しんでいたし、次も楽しみだった。
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