1

4/37
前へ
/37ページ
次へ
 彼女は私の授業で特別優秀だった。それは学力テストの結果でもわかっていたことだったが、やはり目を引くほどのものだった。しかしそれは些細な事だともいえる。テストの結果や私が初めに抱いた彼女への印象が積み重なって目を引いたのか、それともそういう実際的なこととは別の理由で興味関心を持ち、それらに目が留まったのか。どちらなのかわからない。あるいは、根本的なところで互いの共通点を認識しあっていたのだろうと考えてみるのが、幸福ととれる理由なんじゃないだろうか。 そしてその幸福な理由で私は彼女のことを眺めることが増えてくる。それはただ印象として残っているだけなのかもしれない。私は授業に集中している。生徒も集中して授業を受けている。そこは名の通った進学校なのだから中途半端なことはできない。それでもそのクラスの中で名前を憶えているのも顔を憶えているのも彼女だけなのである。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加