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 テストの答案が全て生徒に返されると学校は穏やかさを取り戻す。この瞬間が私はいつも好きだった。余分な緊迫感は少し居心地が悪い。でも今回はいつまでも私だけが一人、居心地の悪さを感じ続けている。「私の話を聞いてもらえますか?」と彼女は言っていた。それでいて何の反応もない期間がだいぶ続いているように感じていた。しかし思い返せば大した期間もあけず、彼女は私に接触していた。むしろそんなに気になるものなら自分から彼女に聞いてしまえばよかったのだと思いもするが、それをできないくらい私は真剣に彼女のことに悩み始めていたのだろう。 そしてテストの後三度目か四度目の授業の終わり、突然彼女に「これを聴いておいてください」と CD を渡された。そこまで忠実になる必要もないのだが、特に聴かない理由もなかった。
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