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朝方、頬に違和感を感じて目を覚ました。
眠気が酷く目が開けられないまま、何だろうと思い神経を集中させると、どうやら飼っている犬が顔を舐めているらしい。
(……こんな時間に起きてるなんて珍しいな)
やれやれ仕方がないなと鼻息を漏らしながら、犬の頭を撫でてやろうと布団から腕を出すと、まるで逃げるようにスッと顔の前から気配が遠ざかった。
(何だよ、逃げることないだろうに)
重い瞼をどうにか開き、犬の姿を探そうとした瞬間――。
仰向けに寝ている自分の真上に、どす黒い舌をベロリと垂らして笑う見知らぬ老婆の生首が浮かんでいるのことに気がつき、私は咄嗟に身体を硬直させた。
目が合った途端、老婆は更に笑みを深くしながら吸い込まれるようにして天井の中へと消えていなくなってしまい、薄明るい見慣れた部屋の景色だけが視界に残った。
目だけを動かし横を見れば、すぐ側で飼い犬が丸まって寝ている。
果たして、今自分が見たモノは何だったのか。
どうにか気分を落ち着かせようと思い、緊張と恐怖で震える肺で大きく深呼吸をすると、自分の顔から生臭い唾液の臭いが漂ってきて私は慌てて息を止め起き上がり、洗面所へと駆け出した。
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