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いつの間にか妹も側に来て、聞き耳をたてていた。心配そうに見つめるその視線に、絶対に妹は守りきってみせると鼻息を荒くした。
「お母さんが夕方には帰って来るので、その頃にまた来て下さい」
お昼ご飯の焼きそばを食べてからそれほど時間は経っておらず、夕方になるまでにはまだかなりの時間があった。そつなく答えた私に、おじさんは益々弱り果てた声を上げた。
「いやぁ、しっかりしてるねぇ。こんなことなら、前もって連絡しとけば良かったなぁ……」
同情を買うようなセリフに思わず心が揺れそうになったが、これも演技かもしれないと気を引き締める。
「ごめんなさい」
とりあえず謝ってはみるものの、私に扉を開ける意思は1ミリもなかった。
「じゃあさ、お父さんに連絡してくれないかな? 今家に、田川のおじさんが来てるって。そしたら、おじさんが本物だって分かるから」
えっ。お父さんに……
おじさんの言葉にたじろぐ。携帯を持っていないお父さんに連絡をするとしたら、会社に直接電話して呼び出さなければいけない。お母さんの職場にさえ電話をかけたことなんてないのに、お父さんの会社に電話するなど、小学生の私にとってかなりハードルが高い。
けれど、このままではおじさんは帰ってくれそうもなかった。
「分かり、ました……」
いったんインターホンの受話器を置き、大きく息を吐く。
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