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妹が身を乗り出す。
「お父さん、何て言ってた?」
「家に入れて、お母さんが帰って来るまで待っててもらって、って」
「そうなんだ……」
妹は考えるような仕草をしてから、玄関へと続く扉を開けた。
「どんな人か、見てみる!」
「ちょ、ちょっと……!!」
私が止める前に妹は飛び出して行き、背伸びをして扉の覗き穴からおじさんを観察した。
「ど……どう?」
「うん。おじさんが立ってる」
何も役に立たない情報を教えてくれた。覗き穴から見ていることは相手に丸わかりなので、このままの状態でいるわけにもいかない。妹を覗き穴から立ち退かせ、今度は私が代わりに覗き見る。人の良さそうな少し赤ら顔をして眼鏡をかけた、優しそうなちょっと太めのおじさんがそこには立っていた。
近所の人がずっと家の前に立ち尽くしているおじさんの姿を見たら、怪しまれるに違いない。ちょっと可哀想な気持ちになってきた。
「開けるよ」
高らかに宣言し、後ろで頷く妹を合図に、ガチャリと鍵を横に回し、ノブに手を掛けた。
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