胸の鼓動は届かない

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「え、ほんま? くらくらしてた私?」 「ああ、授業中に船漕いでるやつくらいにはな。流石にこの暑さで寝るやつはいないやろ思って水かけたけど、良かったか?」 「……すんまへん、助かったわ」  ナツにはいろいろ言いたいことはあったけど、助けられたお礼が先だった。素性もしれない女子を助けてくれるあきとの優しさと、その思い切りの良さになんと言っていいか分からなくなった。 「ええけど、二度目はないで。俺、練習大事やし」 「ええよ、次はないようにするから。ありがとな、あきと君」 「……なんで俺の名前知っとるん? なんか変やなーって思ってたけど、もしかして俺目当てでおったんか、あんた」  怪訝な表情を浮かべるあきとにナツは答える。 「実はな私、あきと君の音好きやねん」
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