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「ごめんね」
「何が?」
「あのことだよ。きっと、全部あなたのせいってことになったんでしょ」
「どうだっていい。むしろ謝るべきは僕の方だ。僕が何も知らない馬鹿じゃなければ、君を止めることができた。いつも君がしてくれたみたいに、『それはいけないことだ』って言ってあげられた」
「違うよ、それは。私、あなたがそんなこと言えないって知ってたもの。知っててあんなことさせたんだもの。悪いのは全部、私。あなたにこんな場所まで用意させて」
私たちを乗せたゴンドラは、いつの間にか頂点を過ぎていた。ゆっくり近づいてくる遊園地は、当たり前だけれど空っぽのままだ。
「不満があるなら遠慮せず言ってくれよ。乗り物に飽きたなら、君の言うとおりに新しいのを用意する。着ぐるみだって増やせる。窮屈だって言うなら、いくらでも広くする。見渡す限り遊園地にするんだ」
「モル。あなたには感謝してる。ほんとだよ。でも、もう何もいらない。ここは、私一人には広すぎるよ」
「……寂しいなら、ほかの連中も連れてくる。もともとここは、そのための場所だ」
「知ってるよ。〈ヴィーゲ〉でしょ、ここ」
モルは目を丸くする。こそこそ仕組んでいた悪事を見抜かれたときみたいに。
「私、あなたよりお姉さんだもの。お見通しだよ。でも、それはダメ。逃げ出した私に、これ以上彼らの首を絞める権利はないもの。それに、寂しいって言ったのは、それだけじゃない。あなたのことも」
「僕?」
「モルはどんどん齢をとっていくでしょ。私は〈ヴィーゲ〉の中で、子どものままなのに。もう、それに耐えられそうにない」
「それなら、僕もここに来るよ。管理人としてじゃなく、君と同じ立場で。そうだ、そうしよう。戻れなくなったって構わない。あっちに未練なんてないんだから」
「モル、いい加減にしなさい」
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