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「次は、メリーゴーラウンドにしようか」  まだコーヒーカップが止まらないうちから、モルは提案する。退屈が顔に出てしまっていたかもしれない。 「また回るやつ? 酔っちゃうよ」 「だらしないなぁ、トーは。まだまだいけるだろ」  楽し気に言うと、モルは思い切りハンドルを回す。気を遣わせたというのは私の勘違いだったらしい。私たちを乗せたカップが回転を速め、電飾が光の帯となって私の目に映る。 「ねぇ、ほんとにやめて」  声のトーンを落とすと、モルは慌ててハンドルから手を離した。 「ごめん、少し休む?」 「是非ともそうさせていただきたいね」  カップを乗せたステージが、紳士的に回転を緩めていく。モルは立ち上がると、申し訳なさそうに私に手を差し伸べる。 「次は、もう少しゆっくりできるのにしようか。その、観覧車はどうかな」  私の顔色を窺うみたいに恐る恐る言う彼が可愛くて、つい笑ってしまいそうになる。昔からこうだ。いたずら好きなこの子は、調子に乗って、痛い目を見て、ようやくまずいことをしたと気づく。背が伸びてしまっても、こういうところは変わらない。 「いいよ、それで。でも、ちょっと歩きたいかな」  私が機嫌を直したのに安心したらしく、モルは顔を綻ばせて「そうしよう、そうしよう」と繰り返す。
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