あちら側

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「新顔ですね」 不意に、隣から声をかけられた。 驚いて立ち止まると、いつの間にか、隣に男が歩いていた。 目深にフードを被った、若い男だ。 私より少しばかり、年下だろうか。顎のラインにほんのわずかに、少年らしさの名残が残っている。 ここで人に話しかけられるのは、初めてかもしれない。 「どうして、ここに?」 「私が死んだ理由が、聞きたいの?それは、原因、それとも、方法?」 男は少しだけ肩をすくめた。 どちらでもいい、そんな感じだ。 天気の話でもしているように、私の死因を聞いてくる。 藪から棒に何かとむっとしたが、まあ、他に話題もないのだろう。だって、何もない町なのだから。 私も肩をすくめて前を見た。 男はフードを被った頭をわずかに傾げて、私を促す。 「ありふれたことだと、笑わないでね。失恋?違うわ。私に、興味が、なくなったんだって。もう、なんとも思っていないんだと、そう言われたの。酷いでしょう」 そうだ。あれは、失恋なんかじゃない。 ただ、一方的に、放り出されて捨てられたのだ。 失ったものは、恋ではなかった。 放り出されて転がり落ちたのは、私の、心だ。 「嫌われた方が、まだいいわ。それで、何もかも厭になって」 自分の指先が無意識に、首筋に残った赤黒い痕を撫でているのに気が付いて、ぎゅっと手を結んだ。 「だから、死んだの」 笑った私を、男はじっと見ていた。
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