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ポエムみたいなことを普段から恥ずかし気もなく口にする早瀬はもちろん、僕など眼中にない。いや、僕を見ている人なんて、この世にいない。両親はさして出来が良いわけでもない弟ばかり見ているし、他に僕と関わりを持っている人間など誰一人としていない。これが結果だ。現実逃避して、人と向き合うことから逃げて、そうやって生きてきた結果。結局は自分にも、過去にも現在にも未来にも、何一つ向き合うことができず、そして今、生きる事からさえも、向き合うことをやめ、逃げ出そうとしている。それは死と向き合うことなのだと折り合いを付けようとしている自分を、第三者的な自分は殴りつけたい。本来『死と向き合う』という言葉は余命いくばくも無い人間がやることで、それをしてもまだ死ぬのが怖いという、そういうものなのだ。それを濫用している自分が憎たらしかった。生きてる人間全員から、「じゃあ私達は死と向き合っていない愚かな人間なのか!」と言われて萎縮している自分の姿が容易に想像できた。
僕の悲観主義の妄想はいよいよクライマックスを迎えた。自分の存在価値とか、そんなものは最初からなかった。ただ今は、身体よりも心、精神を虐めたいという意思が強かった。この惨めな、自分の全てもろとも、世を生きてゆくに値しない自分の心と共に消し去りたかった。頭、顏、肩、腹、腕、尻、脚、自分勝手、現実逃避、弱さ、強がり、嘘つき。自分の全てを消し去りたい。この誰もいない静かな屋上で、人知れず消え去りたい。それができるのであれば、そうしたい。そして皆、僕のことなんか忘れ去ってほしい。実際は僕がいなくなったら皆僕のことなど忘れてくれるだろう。戸籍上の問題もあるので、学校や警察沙汰になるだろうが。けれども、人の欲望には必ず、痛みと感傷が伴う。死への欲を満たすためには、ここから飛び降りなければならい。そして覚悟を決めた後でも、やはり未練は残る。
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