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そんなことを思っていた自分を、数日後の自分は殴りたい。孤高によって何かが生み出される訳でもなければ、前向きに捉えられるようになったかと思えばそれも違う。結局は同じなのだ。人と向き合うことから逃げているだけの人間だ。ましてや自分にも素直になれない人が、孤高だなんて威張れるはずもない。魅力のある言葉に誘惑され、洗脳されるのはよくあることだが、それはあくまで一時的なものでしかなく、冷めてくるとその言葉はガラクタでしかなくなる。よく考えてみれば、魔法は解ける。いや、考えるなんて傲りだ。ちょっと思っているだけ。薄くて透明で、ちょっとの衝撃ですぐに割れてしまいそうな自分。幼稚園の頃、窓硝子を割ったことがある。あの時の衝動は、新鮮に覚えている。壊してみたい、砕け散るところを見てみたい。その感情は今、怒りを伴って、破壊への衝動へと繋がっている。脆い自分を破壊したい。その衝動が収まることはなく、僕
は興奮してその日一睡もできなかった。
翌日学校に来ると、ホームルームで若木先生がとなり町で起きた通り魔事件について話した。僕は朝のニュースを見ないので、この情報は初めて知った。
「平凡な日常を送っている人の命が奪われるなんて、世の中残酷なものね。」
ホームルームの後、早瀬が話しかけてきた。人との関係を怠ってきた僕は返す言葉に迷っていたが、早瀬は僕の返事など期待していないかのように、話を続けた。
「私ね、世の中で一番残酷なのって、運命だと思ってるの。」
運命。まさに、自分にぴったりの言葉だった。人と向き合えないのも、逃げてばかりいるのも、みんな持って生まれたもの。運命だから、仕方がない。そうやって折り合いを付けるのも、所詮は逃げることに過ぎないのだと、頭では理解していても、
「世の中アンフェアなのを、運命って言葉で決めつけるのは、確かに残酷だよね。」
思わず言葉が出た。それは、自分が不平等な社会において損をしている人間だと、自分で認めた何よりの証拠だった。
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