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過去の記憶も清算され、もう死ぬ以外にやることは何もなかった。いつのまにか灰色の雲が視界から消え失せていたが、それはすぐさま、人生最後にみた景色になる。目を閉じて、ゆっくりと腕を広いげる。9月の不穏な風が、爽やかで気持ちが良い。ひとつ深呼吸をした時、屋上の扉の開く音がした。
「キャー!!!」
僕はもう身体に身を委ねるということができなくなり、ただ風の音を聴いていた。どのくらい時間が経ったのか、僕は何人もの教職員に取り押さえられた。気の利いた言葉一つ出すことができず、蠅が口に入った時のような嫌な後味が残った。
―――いったい何故、こんな絶望しかない、残酷で陰惨な社会を生き抜いていかねばならないのだろうか。
本気でそう思っていた僕を嘲笑うかのように、空はただひたすらに青かった。
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