誰も知らない、君のこと

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 一年の時に、とある授業がありまして。まあ、単位目的で取った授業だったんですけど。そこに何だかすごく……真面目な生徒がいて。その人が気になって、ずっと見てたんです。そうしたら、こうしちゃおれん、私も頑張らないとって思い始めて。  ――ただ、それだけで?  はい。その人はいつもボロボロの服を着てて。いかにも苦学生って感じだったんですよ。私はというと、その頃親のお金で学校通って、のんびり服を作ってた。……んですけど。  ――火が点いたんですね。  はい。あと……彼はきっと、〝ワタナベカナエ〟のターゲット層、そのままだったんです。頑張ってる、頑張ってる、普通の人。勝手なイメージなので失礼なんですけど……頑張っても、頑張っても、誰にも見向きもされなくて、世間に知られず人生を終えるような……ごく普通の人。そんな人に私の服を着てもらいたいなって思って、ずっと彼を見ていました。それで、イメージした試作品をプレゼントして。それが始まりだったんですよね。いつか彼と、一緒に仕事できたらって思いますね。いえ、彼がデザイン関連の仕事に就くのかは知らないんですけど。  ――今回、五十嵐さんの素敵なお人柄に触れられてよかったです。ありがとうございました。  ありがとうございました!  
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