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しかし、何だ。
顔は怖いし背も高いし筋肉も付いてるし見た目危ない人にしか見えないけど、話してみるとそこまで危ない人じゃなさそうだ。
超顔怖いけど。
少なくとも会話は成り立つ。
問答無用で殺されない。
「……、いえ、もういいです。この際何でも。
お願いですから、ちょっと城まで来てくださいよ」
「だから嫌だって言ってんだろ。
そんな暇あるなら畑耕す」
「ちょっとですよ、ちょっと。すぐ終わってすぐ戻って来て畑耕せばいいじゃないですか」
「そもそも行かなけりゃちょっとのロスもねェだろうが」
これはもしかしたら、上手く説明したら渋々でも城まで来てくれるんじゃ――
「いやいや。王命無視なんてしたら最悪土地取り上げられちゃうか……も……」
「俺の畑を誰が何だって?」
「っ、滅相もありません!!」
――なんて、俺が間違ってました!!
やっぱり絶対、問答無用で殺す人だコレ!
むしろ今ちょっと本気で睨まれただけで俺死にそうだよ!?
俺一応これでも戦場経験ある兵士なんだけど?
完全に迫力で負けてますね!
ううう涙目になってきた。
「……お前兵士だよな?
泣くなよちょっと殺気零れたくらいで」
「無茶言うな!」
いや待って殺気ってナニ。
ゴメン何でもない聞きたくない。
もうこうなったらあれだ。
最終兵器を出すしかない。
俺は耕されて柔らかい土の地面に向かって、勢い良く膝と手と頭を下げた。
まぁ所謂ところの土下座である。
「どうか何卒!お願いします何なら畑手伝いますから一緒に城に来てくださいー!!」
恥も外聞もなかった。
死ぬよりマシだ。
「お前……俺の耕した畑に何すんだよ」
あれ、なんと逆効果?
これは予想外だ。
恐ろしすぎて顔が上げられない。
「お、お願いします!」
もはやそれしか言えない兵士と言う名の中間管理職(俺)に、農民様は深々とこれみよがしなため息を吐き――――
「イヤだね」
いやココ普通頷くとこだからぁ。
結局最終的に、「休耕期に来い」と言う鰾膠も無い言葉を持ち帰り、俺は給料を減らされた挙句再チャレンジを余儀なくされた。
魂がすり減った。
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