とある王様の場合

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突然だけど、王様業って言うのは、強大な権力・膨大な財産と引き換えに、かなり敵の多い職業なんだよ。 身近な者が信頼出来るかイチイチ気にしないといけなかったり、数多の兵士や側仕えの命を盾にしてでも生き延びる義務もあったり、大層めんど……もとい、あー、やりがいのある難易度の仕事で。 はぁ。王家に長男として生まれただけでこの仕打ち、誰かに物申したいなぁ。 物申す相手もいない訳だけど。 ……まあ、愚痴る相手が数人居るだけマシかなぁ。 ただ、1人は滅多に会いに来ない。 と言うか、権力使って呼びつけても来ないとかどういうことだろう。 国王陛下だよわし。 可笑しいだろあの自己中農民。 ちなみにあの農民を愚痴る相手として数えてるのは、別にわしがあの農民と「仲良し」なわけではない。 ただ敵対したら確実に勝てないので、なら絶対敵対しないようにするし何愚痴ってもいいんじゃないかなー、って、わしが思ってるだけ。 え? 愚痴が癇に障って敵対したら? 大丈夫大丈夫。あの農民、顔は怖いけど意外と懐深いよ。 うん、彼の農地をどうこうしないかぎりは。 暇ならちょっとは付き合ってくれるし。 ……暇ならね。 で。えーっと。 何だっけ? ああ、そう、王様業は敵が多いって話。 農閑期ならね。良かったんだけど。 多分暇つぶしに城まで来てくれて、多分命令も受けてくれたから。多分。 でもねー。 わし、いま命の危機なんだよね。 今。 わかる? いや、次の瞬間死ぬとか、そこまでは切羽詰まってない。 ただちょっと、いや、結構、うーん、物凄く? 厄介な手練に暗殺依頼されただけ。 頼んだ人間はね、もう対処したの。 そりゃあわし、それなりに王様歴長いから。 それくらいは当然。簡単なお仕事だった。 でも、暗殺依頼がさ、前払いなんだって。 で、プロの暗殺者だから、お金貰った以上確実に依頼を果たすとか。 余計な、あー、職業意識高いこと言うんだよねぇ。 わしとしては、ラッキーで着服しちゃえって勧めたい気分。 だから。 うん。 うん? だから、それが農民呼んでって命令した理由。 ほらわし、まだ死にたくないから。 頑張って呼んで。出来るだけ早くね。
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