とある農民の場合

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その戦争でちょっとした手柄を立てて、褒賞を与える、とかで登城したのだ。 勿論国王と1体1の対面ではなく、十把一絡げの農民イチとして、だ。 それが何でこうなったのか……あん時空気読まずに国王暗殺とか始めたバカのせいだ。 ソイツと国王との進路上に俺が居たので、羽虫を払う感じで排除したら妙に騒ぎになって、次に城に呼ばれた時はもうこんな感じだった。 「土作りが1番大事なんだって前に言っただろ」 「いや、わしもね、農閑期まで待ちたいのは山々なんだけど」 「イヤわかってんなら待てよ」 まあ、今は土を耕し始めたばかりだから、農閑期まではそれなりにあるが。 どうせまた、どっかのバカに命狙われたとかだろ?大丈夫だ野菜がある程度育つくらいまで保つってお前しぶとそうだし。 「……何かわし、失礼なこと思われてる気がする」 「気の所為だろ」 即答したよこの農民……。と、ため息を吐く国王に、側近らしい痩せた男が何かを耳打ちする。 国王はそれに頷いて、「任せる」と一言告げた。 もう何度もこうしてやり取りしているのに絶対に俺に近寄ろうとしない見慣れた側近が、やはり遠くで ビクビクと呟く。 「ほ、ほほ、報酬は、いつもの、農閑期の倍出します」     
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