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襖要塞
田舎にある父方の祖父母の家に久しぶりに足を向けた。
二人共十年近く前に亡くなって以来ここはずっと空き家だが、色々と家財道具は残っていて、今日はそのいくつかを取りに来たのだ。
平屋だが部屋数は多く、ふすまに仕切られた部屋が何室もある。
その部屋の一つで箪笥の中を見ていたら、ふいに誰かの気配を感じた。
泥棒? でもこの家は、正直戸締りなんてしてないのも同然の状態で、物が祖父母間生前そのままに残っているのも、めぼしい物がないから誰も何も持って行かないというだけの状態だ。外には俺の車が置いてあるから、わざわざ人が来ていると判るタイミングで押し入ってくるなんてありえない。
家財ではなく、俺の乏しい持ち金狙いの強盗か? でもこの限界集落にそんなことをしそうな人物がいるだろうか。
色々な考えが意識を巡るが、どれも決定打にかけている。だからまずは様子を見ようと、俺は警戒しながら気配の先を窺った。
襖の向こうに何かがいる。でもそれが人間だとはっきり確定はできない。
犬や猫が入り込んでいる可能性…いや、土地的に野生の猿とかがいてもおかしくはないし、人間を見かけ、餌でもないかとやって来たとしたら、確率としてはそれが一番高い気がする。
何にしろ、驚かすような真似をしたらパニックを起こして暴れ出すかもしれない。だから正体は慎重に暴かないと。
襖に手をかけ、音を立てぬよう、僅か数ミリ開けてみる。途端、その隙間から何か白い、無数の紐のようなものが現れた。
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