真っ赤な白鳥

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 けれど私のうちはふつうのサラリーマンで、あなたやみんなのようにお金持ちではないんです。アルバイトなんてダサい、なんて言われて、働くこともできなかった。私は、身体を売ることを覚えました。    だって、仕方ないでしょう? お金がないとみんなと遊べない。バッグも服もいるんです。あなたの車でみんなと箱根に行った時、私が着ていたワンピースは、愛人していたパパに買ってもらったもの。かわいいね、とあなたはほめてくれたけど、あれはあのおじさんが私に見つくろったものなのよ。そしてそのワンピースを、最初に脱がせたのもあのおじさん。あの人は、私にたくさんのものを買ってくれました。  就職して、これでもう身体を売らなくていいと思ったら、反対でした。仲間のひとりの美佐が、私をおどしました。「愛人バンクやってたの、悠一にばらすよ。嫌ならお金持ってきなさいよ」  その頃にはもう、あなたは私の気持ちを知っていましたね。ふりむいてはくれなかったけれど。あなたは大学時代から有希子と付き合っていた。お嬢様の有希子。あなたは有希子のおうちの会社に就職した。でも私は、あなたをあきらめきれなかった。  私は美佐に渡すため、お金を作り続けました。最初は月に10万でした。それでも大金でしたが、パパにお願いすればもらえる金額でした。  でも美佐の要求は止まりませんでした。額も大きくなりました。26の時には月に50万を渡していました。美佐はあなただけでなく、会社や家族にバラすと言っておどしてきました。私はパパを4人に増やして、寝る間もおしんで働きました。  そんな中でも、月に2回開かれるいつものパーティーが私の心の支えでした。 美佐も有希子も幸太くんも裕美も翔くんも、みんなが集まるあのパーティー。  商社に有名IT企業。翔くんは広告代理店。素敵な場所でキラキラしながら働いて、みんなとても輝いていましたね。あなたと有希子はいつもよりそっていた。私は出版社で校正をしながら、ひたすらおじさんに仕える毎日。私からの連絡に、あなたはめったに返事を返さない。
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