真っ赤な白鳥

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 おかしいことは、自分でも分かっていました。こんなのは変だって、私にだって分かっていたんです。  いくら見つめても、あなたのとなりにはいつも有希子がいる。そして美佐は有希子の親友。美佐に渡すお金が作れなくなれば、あなたは私をさげすむことになるのでしょう。  そうです、私は売春婦。お金のために、平気で股を開く女です。でもそれもすべて、あなたのため。ほんの少しでいい、あなたと接点が欲しかった。輝いていて1番上にいるあなた。ここまで身を粉にして、何百万もつぎこんできた。いまさらあきらめるだなんて、考えられなかった。  あなたと有希子の結婚式で、私が泣いていたのは祝福の涙じゃなかった。それはあなたもご存知ですね。そして籍を入れたとたん、態度を変えた有希子。有希子が欲しかったのは、あなたのおうちの格式とお父さんの名声。あなたのめずらしい名字を手に入れて、有希子はとうとう本性をあらわした。私が美佐に渡すお金の、半額を受けとっていた有希子。  でも、私にとってはそれでよかったんです。あなたが、私を頼ってくれたから。私は言いましたね。「二番目でもいいから」……当然なんです。私はプロの愛人ですもの。  そしてとうとうあなたが手に入りました。あなたをいやし、愛し、やっと手に入れた満足にひたりました。 有希子に勘づかれないように、私はとても上手だったでしょう? あなたは私を次第に愛するようになってくれました。真ん中でしかない平均点の私を、かけがえない存在だ、と言ってくれたあなた。  でもね、あなたに夢中になった私は、パパ達をないがしろにするようになってしまったの。有希子に監視されているあなたは、いつ時間が空くかわからない。だから、私もなるべく時間を空けておかなきゃ、あなたに会えない。  大体、パパに抱かれた汚い身体で、あなたを愛するなんて嫌だったのよ。おじさんの加齢臭が染みついた私の身体。あなたはいつ気がつくのかしら。私は気が気じゃ、気が気じゃなくて……。
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