2-3 青き悪魔

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 シャインは艦長室に戻ると部屋の奥のクローゼットへ手を伸ばした。 「忙しそうね」  背後から響いた声にシャインは振り返った。  艦長室の扉の前でロワールが立っていた。腰まで伸びた緩やかな紅髪を揺らし、透き通った水色の瞳が硝子のようにシャインの顔を映している。  正直息が止まりそうだった。 「――驚いた。部屋に入る時はノックを頼むよ……」 「えー」  ロワールは白い頬を赤く上気させ唇を尖らせた。 「別にいいじゃない。私は出てきたいと思った時しか姿を見せないし」 「……」  それは確かにロワールの言う通りだ。  このロワールハイネス号の船鐘に宿る彼女は、いわば『船の魂』といえる存在だ。  よって人間の姿でシャインの前に現れても、血肉を備えた『実体』があるわけではない。 「そうよ。ノックなんかしようと思っても――見て」  ロワールは右手を艦長室の扉へ伸ばした。それは扉をあっさりと突き抜けた。 「ごめん。俺が悪かった」  ロワールはノックをしようとしてもできないのだ。 「わかってくれたのならいいわ」  両手を腰に当ててどうだと言わんばかりにロワールが頷く。  でも。  シャインはロワールを凝視した。 「おかしいな」 「えっ?」
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