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シャインは軽く息をつき顔を上げた。
ちくりと背中にストームの剣の切っ先が突きつけられるのを感じながら。
一歩を踏み出す。
その後をストームも黙ってついて行く。
「ジャーヴィス副長――」
ジャーヴィスに近付いたシャインは、彼の厳しいその眼差しに、一瞬言葉を途切れさせた。
ジャーヴィスはシャインを睨んでいた。
冴え冴えとした青い瞳が、自分の行動を咎めるように、凍り付くほど冷たい光を放っている。
ジャーヴィスが怒るのは当然だろう。
乗組員を助けるためとはいえ、海賊であるストームと取引をしたのだから。
彼の潔癖な性分からいえば、この行為はとても看過できるものではないはず。
けれどシャインは思う。
生きていればチャンスはある。
一か八か行動を起こした結果、甚大な被害を被るのなら、必要最小限の犠牲で済む方法を取るべきだ。
一人の人間より多数の命を選択しなければならない時がある。
軍人としてこんな所にいるのならば、なおの事――。
ストームが再び剣の切っ先を背中に押し当ててきた。
早くしろ、といわんばかりに。
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