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シャインはジャーヴィスの正面に立った。
思い返せばジャーヴィスはいつも眉間に皺を寄せていた。
そんな顔をさせているのは、紛れもなく自分のせいだった。
シャインは彼の険しい瞳に向かって口を開いた。
「君にはいつも嫌な役ばかり押し付けてきたけどこれで最後だ。すまないが、あの人へ――グラヴェール中将へ俺の指輪を渡して欲しい」
「……」
ジャーヴィスはシャインを睨み付けたまま答えない。
非難や罵倒されることを覚悟していただけに、沈黙で返されることの方が心に堪えた。
シャインは俯き、右手を上げると、人差し指にはめていたブルーエイジの指輪を左手で抜き取った。
暗い甲板の上でもそれは停泊灯の光を受けて、きらりと青銀に輝いた。
その動きを見ていたジャーヴィスが真っ青な瞳を細めた。
ゆっくりと首を左右に振る。
「やめてください。私はこんなこと……絶対に認めません」
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