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「クラウス! 武器庫を開けてみんなに武器を配れ! それから誰か、手を貸してくれ!!」
ミズンマストの前でシルフィードのそばについていたクラウスは、弾かれたようにすくっと立ち上がった。
「はい! 副長! そうだ、後部ハッチの壁に、非常用の斧を立て掛けてある。それを持って誰か……副長の所へ……!」
クラウスは溢れてくる涙を指で弾き、脱兎のごとく後部ハッチへ走った。
「クラウスさん、俺達が行きますぜ」
扉の横の壁に固定されている斧を取ろうとしたクラウスの頭上を、太い腕がにゅうっとよぎり、軽々とそれを持ち上げた。
先程シルフィードを運んだ中年の水兵エルマと、声の主は見張りのエリックだ。
「お願いします」
クラウスは大きくうなずいた。
「斧はあと二本ある。早く副長に手を貸してあげて!」
「わかってますよ。おおい! みんな早く武器庫へ急げ! 海賊共を逃がしちまうぞ!」
エリックは大声で水兵達に声をかけると、クラウスにぺこりと頭を下げ、エルマと共にジャーヴィスの所へ走っていった。
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