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「あ……あいつら! あたしを置いていく気かい!」
ストームが船縁から身を乗り出して叫んでいた。
ジャーヴィスは視線を、先程まで右舷側にいたストームの船に向けた。
メインマストに主帆が上がりつつある。逃げる気だ。
「おっと……!」
ジャーヴィスはよろめいた体を支えた。ロワールハイネス号が後退から、前進へと変わったのだ。からからと舵輪が回る音と共に。
『あんたたちは絶ーー対、逃がさないんだから!!』
ロワールの鬼気迫る声が甲板中に響き、彼女を取り巻く水色の光が、一際強い輝きを放った。
ロワールハイネス号は、ストームの船の左舷側船体に向けて、船首を大きく突っ込ませたのだった。
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