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◇◇◇
「この船……“船の精霊”がいたのかい……なんてこった。そうと知ってたらまっ先にこいつを頂いて、逃げればよかったんだ。あーあ……」
ロワールハイネス号のメインマスト付近で、落下してきた帆の上げ綱の下敷きになっていたストームは、毒づきながらその身を起こした。
「まったくその通りだな。きっとレイディは、お前を乗せたまま軍港へ戻ってきてくれたに違いない」
ぎらっとした銀の光を放つ斧を手にしたジャーヴィスが、無気味なほど凄惨な微笑を浮かべて、ストームを見下ろしていた。
その後ろには、剣を構えた水兵達が6人ほど待機していて、みるまにストームを取り囲んだ。
ストームは膝をついたまま、自分の剣を探したが、側に転がっていたそれは刃が3分の1のところで折れてしまっている。
彼女は両手で役に立たない剣を持ったまま呆然とながめた。
額から冷たい汗が流れ落ち、久しく忘れていた感情がわきおこる。
「ちょっと……待っとくれよ。そもそも今回あたしはね……」
ジャーヴィスは表情ひとつ変えず、水兵達へ彼女を縛り上げるよう命じた。
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