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◇◇◇
一方、ストームの船には武装したクラウスと、10数名の水兵達が乗り込んでいた。停泊灯がついてないので、様子がよくわからない。
甲板は無気味なほど静まり返っていて、だが、耳をすませば人間のうめき声みたいなものが小さく聞こえる。
「む、無駄な抵抗をするんじゃないぞ! お前達は逃げられないんだからね」
口調は思いきり強気なのだが、クラウスの目は宙を泳いで、剣を握る両手は必要以上の力が入り、ガタガタと震えている。
「クラウスさん、なんか、戦う必要ないみたいですぜ」
となりにいた中肉中背の水兵がクラウスに話しかけた。
「ええっ!?」
クラウスは灯りを持ってこさせた。
ストームの船の甲板が、角灯の照らす光の輪の中に浮かび上がる。
そこは足の踏み場がないほどロープや索具、帆が散乱していて、その下からうめいている海賊たちがいた。頭から血を流している者もいる。
恐らく、船が衝突したときに上から落下した滑車に、頭をぶつけたのだろう。
クラウスはほっとして、心から本当に安堵して、緊張のあまり強ばらせていた表情をやっとゆるめた。
「よーし、今のうちに縛っちゃおう」
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