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「海賊は一度受けた恩義を忘れない。だがあんたたち海軍は、それを平気であだで返す。クズだよ……人間のね。まったく、あの坊やも大した役者さ。将来が末恐ろしいよ」
「……おい」
ジャーヴィスはストームの頬を右手ではさんで、自分の方を向かせた。
ただでさえ分厚い彼女の唇が、寄せられてぷるぷると震えている。
この女の顔を見るだけで、腹の底から沸々と怒りがわいてくる。
シャインがあのままストームと一緒に行けば、彼にとってすべてが終わっていたのだ。それを知らないくせに。
「ストーム、いいか? お前と艦長が何を約束したのかは知らないが、私には関係ないことだ。お前を捕らえたのは私なんだ! だから……グラヴェール艦長はお前の約束を破ってはいない。あの人の前で、さっきみたいな事を一言でも言ってみろ。私が自らお前を絞首刑にしてやる!」
ジャーヴィスは怒りの感情に任せたまま脅しの言葉を吐いた。
自分でもここまで熱くなるのかと内心驚くほどだった。
ストームはジャーヴィスに頬をはさまれたまま、ゆっくりとうなずいた。
ジャーヴィスの目の中に、赤黒い殺意があるのを確かに見て取ったのだろう。
ストームは貝のように口を閉じて、すっかりおとなしくなった。
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