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「最近、こんなことばっかりだね。俺は」
シャインは自身の不甲斐なさを口にした。
「そうですね」
答えたジャーヴィスの目が細くなる。
しかしその顔はとても穏やかだった。
「……どれくらい眠ってたんだ?」
「今、午前4時ですから……8時間くらいです」
応接机の傍らに立つジャーヴィスの口調は淡々としている。
シャインは長椅子に寝そべったまま両手で顔を覆った。
誰かが手当てをしてくれたのか、掌には真新しい包帯が巻かれている。
消毒薬のすえた臭いが鼻についた。
「ストームは、捕まえたのかい?」
ジャーヴィスに指輪を渡そうとした所までは覚えている。
それから後の事は記憶にない。
けれど落ち着き払った副長の様子をみれば、すべては終わっているのだ。
その考えを肯定するジャーヴィスの声が聞こえた。
「はい。あなたがチャンスを作って下さいました。私はそれを無駄にしたくなかったのです」
淡々と語るジャーヴィスの言葉に、シャインは唇を噛みしめていた。
チャンスだと? そんなつもりは微塵もなかったというのに。
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