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「ロワールハイネス号の船鐘【Ⅱ】」
【第2話】「かけがえのないもの」
ロワールハイネス号がジェミナ・クラス港に着いて二日が過ぎた。
シャインは同軍港に錨泊しているウインガード号の艦長室を訪れていた。
「ツヴァイス中将閣下がお待ちです」
シャインより背の高い歩哨の海兵が、重厚な作りの扉の前から体を横にずらして場所を譲る。
ウインガード号は船齢二十年を迎える二等軍艦で、シャインがこの船に乗るのは初めてだ。シャインは船内を好奇心を抑えながら眺めた。
「グラヴェール艦長。そんな所にいつまでもつっ立っていないで、部屋に入りたまえ」
艶のある低いツヴァイスの声でシャインは我に返った。
「申し訳ありません。今、参ります」
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