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「……」
シャインはロワールが横になっていた空の長椅子を一瞥してゆっくりと立ち上がった。
ロワールの姿が消えたことは気にしていない。
彼女の存在は船の中にあると確かに感じるから。
きっと一時的にロワールは力を失い、人の姿を保てなくなったのだろう。
シャインは右手の人差し指にはめた指輪に視線を落とした。
「俺がロワールと出会えたのは……このせいだというのか?」
まさかこれが自分とロワールを繋げているとは思わなかった。
一見、何の装飾もなされていない指輪は銀に見えるが、本当は銀ではない。
すっかり指に馴染んでいたので忘れていたが、自分は確かに知っている。
いや――思い出した。
風の力を操る叔母のリオーネが、指輪について教えてくれたことを。
ブルーエイジ。
術者に強大な力を与える代償として、それを身に帯びた者には破滅をもたらすという魔石。
『シャイン。本当はこの指輪は、私が引き継ぐべきものなのかもしれない。でも無理なの。どうしても私は触れることができない。恐ろしくて』
『けれどこれはあなたの――の形見なの。あなたが持っていて欲しいと……きっとあの方も願っているわ』
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