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シャインはその日、当直二名とジャーヴィスを船に残し、他の十二名の水兵達を二~三人の組にして、ストームに関する情報を集めるよう指示を出した。
彼らは主に酒場や宿屋、問屋、市場などへ行かせた。
シャイン自身は軍港での用事を済ませた後、午後から一人で、商船会社の倉庫が立ち並ぶ商港を歩いていた。
飾りのない紺の上着とズボン、白いシャツ。大抵三つ編みにして後ろへやっている月影色の金髪は、無造作にひとくくりにされている。
どこにでもいる若い船乗り、といった感じだ。
シャインは丁度荷の積み下ろしがすんだ、一隻の貨物船の前で足を止めた。メインマストの旗竿に、赤色で中央に太陽が描かれた旗が風にたなびいている。
ツヴァイスからもらった資料――海賊ストームの被害に遭った商船会社の一つ――アバディーン商船の船だ。
かの会社はエルシーア国でも最大手で、年商200億リュールを稼いでいる。
シャインは貨物船へと近づいた。
乗組員の姿は甲板になかった。積荷のチェックもすんで、きっと中で一息ついているのだろう。船内へ入るためのタラップもひきあげられている。
船種は三本マストのブリッグ級。エルシーアの貨物船の一般的な型で、近~中距離用だ。船尾のプレートに刻まれている船名はアン=メイリィ号。
船齢はざっと十五年といったところか。
けっこう古い。
だが商船に似つかわしくないものがその上甲板に鎮座していた。
新品で小型の大砲が5門ずつ、左右両舷にすえつけられている。
「ストーム対策……か?」
シャインはぽつりとつぶやいた。
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