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「今日は、レイディ……アン=メイリィ。お目にかかれて光栄です」
シャインは彼女に向かって会釈した。
「ふふふ……その船名、嫌いなの。メリィって、呼んで下さる? 驚いたわ。私に気付く人間がいたなんて」
シャインは肩を竦め人なつっこい微笑を浮かべた。
「よく他の精霊(レイディ)たちにも言われます。大変、幸せなことに」
船の精霊、メリィはふふふ、と笑った。まるで、太陽のような笑みだ。見る者の心を温めるような。
「あなた、お名前は? 船は持っているの? 当然船乗りよね。私が見えるんだから。私達が見える人間は、船乗りが天職よ」
「シャインと申します。船はスクーナーに乗ってます。海軍のですけどね」
途端メリィの顔が曇った。シャインは笑みを絶やさなかったが、何か、気に障るようなことを言ったかと不安を覚えた。船の精霊の機嫌は山の天気と同じだ。
くるくる、その表情が変わる。
しかし誠意を持っていれば、彼女は無闇やたらと怒りはしない。
人の心を読む彼女を欺こうとしなければ。
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