【後日談】奇跡の赤(終)

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「エルザリーナには弟子が一人おりました。彼女の甥でジャムスという男です。だがこの男は、エルザリーナに師事してかれこれ一年が経つというのに、一向にワインの醸造を手伝わせてくれないことを不満に思っていました。  今回エルシーア国王の為に作るワインも、エルザリーナはただの一度もジャムスに触らせませんでした。ジャムスの不満は更に募り、彼はこっそりとワインの醸造樽の中にアマルドの実を入れたのです」 「アマルドの実? 何だい、それは」  ジャーヴィスの話に耳を傾けていたシャインはつぶやいた。 「見た目は葡萄に似てます。アメリゴベスの丘陵地帯の森に自生する植物で、金色の蔓と葉を持ち、赤い宝石のような果実をつける美しい植物です。けれどその実には毒があって、一粒口にするだけで心臓が止まり死に至ります」 「……毒。それで?」  シャインは眠気も忘れ、ジャーヴィスに話の先をうながした。
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