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「国王に製作を依頼されたワインは、既に寝かせるだけの段階までできていました。でも、ジャムスが王宮に密告したのです。エルザリーナのワインには毒が使用されている。国王を殺すためにあの女はワインを作っていたと。
すぐさまエルザリーナは捕えられ、王の審問官の所で厳しい取り調べを受ける事になりました。件のワインの樽も王都へ運ばれ検分が行われました。家畜に与えて毒味をする前に、栓を外すと樽から強い酸味を帯びた臭いがたちこめ、立ち会った役人が何人も倒れたそうです。
これは通常のワインではありえないことです。すぐさま全部の樽が廃棄され、エルザリーナも王を毒殺しようとした罪で死刑が執行されることが決まりました」
「ちょっと待ってくれ、ジャーヴィス。全部の樽が廃棄されたって? じゃ、ここにあるワインは一体なんだい?」
シャインは卓上に置かれたワインの瓶を見つめた。
ジャーヴィスの冷たい瞳に一筋の仄かな光が浮かんで消えた。
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