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「どうして……?」
「エルザリーナのワインは『奇跡の赤』ともいわれます。見ればわかりますが、血のように赤く、けれどどこまでも透き通った美しい色をしています。彼女は獄中で手記を綴っていました。それを読んでわかったことですが、彼女はこの色を出すために、葡萄の他にアマルドの実を入れてワインを作っていたのです」
「何だって? じゃあ……」
ジャーヴィスは静かにうなずいた。
「そうです。エルザリーナの作るワインには、最初からアマルドの実が使われていたのです。この実は唯一アメリゴベスに自生する植物で、血のように赤い。エルザリーナは故郷を愛するが故に、この色にこだわってワインを作っていたそうです」
「でも。アマルドの実には毒があるんだろう?」
「ええ。だからエルザリーナは弟子のジャムスにワインの製作過程を見せなかったんです。誤解を招く事を怖れたんでしょうね。
けれど彼女は知っていました。アマルドの実は葡萄と発酵させることで、生じたアルコールがその毒性を飛ばしてしまうことを。年数が経つにつれて毒は薄まり、最終的には消えてしまう事を」
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