【後日談】奇跡の赤(終)

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 シャインはまじまじとワインの瓶を見つめた。  それほど貴重なものとは知らなかった。 「ということは、毒が消える年数が、約10年ということになるんだね。彼女の遺言では今年の七の月に飲むようにといわれている」 「そうです」  あっさりジャーヴィスが答えた。  シャインはそのすました顔を眺めながら、内心彼のワインの知識の深さに舌を巻いていた。 「ジャーヴィスって、本当にワインに詳しいんだな。驚いたよ」 「いいえ。驚いたのは私の方です。このワインが机の上にぽつんと置かれていたのですから」  ジャーヴィスは再び体を前に乗り出した。 「アバディーン商会はこのワインを1本600万リュールで売ってます」 「ろ、600万?」  海軍大佐の年俸と、この1本のワインが同じ値段とは。  ジャーヴィスが慌てて艦長室にやってきた事を、シャインはようやく理解した。
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