99人が本棚に入れています
本棚に追加
シャインはまじまじとワインの瓶を見つめた。
それほど貴重なものとは知らなかった。
「ということは、毒が消える年数が、約10年ということになるんだね。彼女の遺言では今年の七の月に飲むようにといわれている」
「そうです」
あっさりジャーヴィスが答えた。
シャインはそのすました顔を眺めながら、内心彼のワインの知識の深さに舌を巻いていた。
「ジャーヴィスって、本当にワインに詳しいんだな。驚いたよ」
「いいえ。驚いたのは私の方です。このワインが机の上にぽつんと置かれていたのですから」
ジャーヴィスは再び体を前に乗り出した。
「アバディーン商会はこのワインを1本600万リュールで売ってます」
「ろ、600万?」
海軍大佐の年俸と、この1本のワインが同じ値段とは。
ジャーヴィスが慌てて艦長室にやってきた事を、シャインはようやく理解した。
最初のコメントを投稿しよう!