【後日談】奇跡の赤(終)

29/30
前へ
/398ページ
次へ
「ああ、しない。じゃ、離すよ」  ジャーヴィスとシャインは再び互いを睨み付けたまま、ゆっくりと互いを押さえ付けていた手を離した。  そして同時にグラスに唇をつけた。  味わう事など考えず、一気に喉に流し込む。  シャインは目の前で星がちらつくのを感じた。同時に濃厚な葡萄と薔薇のような香りが口の中に広がり、喉が焼けるような熱さを感じた。 「……どうだい? ジャーヴィス。気分は?」  ジャーヴィスもグラスの酒を干して、一瞬焦点が定まらないようにシャインの顔を見つめていた。だが彼は冷静に空になったグラスを机の上に置いた。 「どうやら大丈夫みたいです。グラヴェール艦長」 「そう……それは、よかった」  シャインはジャーヴィスに笑ってみせた。  そして彼の顔が不意に闇に溶けたことも気付かず、長椅子の上に倒れ込んだ。
/398ページ

最初のコメントを投稿しよう!

99人が本棚に入れています
本棚に追加