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「ふう……。確かにこれほどアルコールが強ければ、毒も何もふっとびそうだな」
疲れたようにジャーヴィスも椅子に腰を下ろした。
安堵の息を吐いて、すでに小さな寝息を立てている年下の上官へ、ほとほとあきれたような笑みを浮かべて眺める。
「このワインは確かに10年経ってから、瓶に詰められたようです。コルクが新しかった……。もしもコルクがぼろぼろになっていたら、気化できない毒が酒の中に残っていますから、私はすぐさまこのワインを叩き割っていたでしょう」
ジャーヴィスはワインの瓶に手を伸ばした。
――あなたの善意と贈り物に感謝します。
奇跡の赤が再びジャーヴィスのグラスの中で鮮やかに踊った。
【第2話・後日談】奇跡の赤 ―完―
・・・ロワールハイネス号の船鐘【Ⅲ】
「第3話 月影のスカーヴィズ」へ続く
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