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シャインは扉を開いてくれた歩哨に一礼して、いそいそと艦長室の中へ足を踏み入れた。
船尾の大窓の前にある執務席には、黒い将官服に身を包んだツヴァイスが座っていた。
背後の窓から入る光のせいで顔が影となり、その表情を咄嗟に伺うことはできない。
けれどシャインが部屋に入るとツヴァイスは席を立ち、薄い唇に笑みを浮かべて自ら出迎えた。
「夜明けと共に風が弱まってしまって、やっと入港できたのだよ。ロワールハイネス号は二日前に着いていたから待ちくたびれただろう?」
「いえ。それも任務のうちですから」
ツヴァイスの機嫌は良さそうだった。
「まずは座りたまえ」
「はい」
シャインは執務机の前の応接用の青い長椅子に腰を掛けた。
机を挟んだ対面へツヴァイスが腰を下ろす。そして茶色の革を張った書類入れを机の上に置いた。
「――見事だった」
書類入れに船乗りにしては優美な指を伸ばして、ツヴァイスが呟いた。
「ロワールハイネス号がジェミナ・クラス港へ四日間で到着した証明書類だ。まずはこれを君に渡しておこう」
「ありがとうございます」
シャインはツヴァイスから差し出された書類入れを受け取った。
開いて中身を確認する。
そこにはグラヴェール参謀司令官宛てで、シャインが命令書通りに任務を遂行したことを確認したという内容でツヴァイスのサインが入っていた。
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