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ジャーヴィスは何を気にしているのだろう。
ツヴァイスは海軍内でアドビス・グラヴェールと犬猿の仲であるということぐらいしかマイナスイメージはない。
寧ろ、ツヴァイスはアドビスに継ぐ実力者でもある。四十になったばかりの最年少の中将で、しかも大型軍艦を四隻擁する「海賊拿捕専用艦隊(ノーブルブルー)」の艦隊司令官でもある。
シャイン自身もツヴァイスに会うまでその人柄は良く知らなかったが、今回の命令について不審な点は感じられなかった。寧ろエルシーアの国益のために、彼は海賊の情報を独自に集めて、自らの職責を果たそうとしている。
やはり、原因はアレだろうか。
アレに違いないだろうな。
ジャーヴィスは『海賊ジャヴィール』を演じるのが嫌なんだろうと思う。
艦長室に戻り、シャインは応接用の長椅子に腰を下ろした。
行儀が悪いが机に脚を投げ出す。
今日は丸一日歩いて過ごした。椅子に座ると立つのが億劫になるほど倦怠感を覚えた。
「さてと。折角皆が集めてくれた情報を精査しないとな」
シャインは長椅子から立ち上がると、ちらりと執務机を一瞥した。
そこにはジャーヴィスが用意してくれた紙の束が置いてある。
今夜は長い夜になりそうだ。
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