2-5 ジャーヴィスの憂鬱

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 翌朝の7時。  船内を見回るためにジャーヴィスは寝床から起き出し、身支度をすっかり終えていた。 ただしロワールハイネス号は商船を装っているため、軍服の着用は禁止されている。  ジャーヴィスは濃緑色の上着を纏い、白いシャツにアスコットタイを締めた、商船の高級船員の格好をしている。     コンコン!   副長室の扉をノックする音がした。 「起きてるぞ、誰だ?」 「僕です。クラウスです」  ジャーヴィスは扉を開けた。そこにはまだ眠そうな顔をした士官候補生が立っていた。さすがに、そのくりくりした大きな目をこする、なんてことはしていない。すれば、ジャーヴィスに怒られるから。  が、自身も悩んでいるくせっ毛の金髪が、寝ぐせでどうにもならないのを隠すため、真っ赤なバンダナを無理矢理頭に巻き付けている。  誰かに起こされて、慌てて着替えたのは一目瞭然だった。 「で、用件は?」 「はい。あの、艦長に会いたいと、お客様が……」 「客……?」  ジャーヴィスは眉をひそめた。  自分達は今、商船のフリをしている。  海軍の記章も旗も上げてはいない。  しかもロワ-ルハイネス号は、ジェミナ・クラス港に初めて入港した。この船が海軍の軍艦であることを知る者は殆ど皆無のはずだ。
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